借金の過払い金はなぜ発生する?取り戻す具体的な方法も解説!

最近は若干下火になりましたが、以前はテレビやラジオの広告でやたらと目にした「弁護士事務所の過払い金請求」のCM。これまで利息を払いすぎていた人にとってはありがたい仕組みにも見えますが、そもそもなぜ過払い金などというものが発生するのでしょうか。今回はその仕組みを、難しい用語を使うことなくわかりやすく解説したいと思います。

過去に借金をしていた人は、これからの手続きでも過払い金を取り返せる可能性があります(ただし残された時間はそう多くありません)ので、ぜひご一読ください。

そもそも過払い金って何?

過払い金とは、文字通り払いすぎていたお金、もう少し詳しく言えば「借金返済の時に支払いすぎていた利息」のことです。借金返済時には元本とともに利息の支払いを行いますが、この利息の利率は法律で決められています。

にもかかわらず、過去の日本では過払い金の支払いが発生したことがあるのです。

闇金ではない正規の金融機関、それもアコムやアイフルのような大手の消費者金融や、オリックスや三井住友VISAカードのようなクレジットカード会社までもが、債務者が支払った過払い金を受け取っていたのです。一体なぜそのようなことが起きたのでしょうか。

過払い金はなぜ発生した?

過払い金が発生した理由は、上限金利を定める法律が複数存在し、しかもその法律の内容に乖離があったからです。また、みなし弁済というややこしい制度も、この問題を複雑化させました。

利息制限法と出資法、2つの法の乖離

2000年代前半頃まで、金利を制限する法律には「利息制限法」と「出資法」という、2つの内容が相反する法律が存在していました。利息制限法では貸付金の上限金利が15~20%(貸し出し金額により異なる)と定められていたのに対して、出資法は29.2%と定められていたのです。

相反する2つの法律があるのならば、より規制が厳しい利息制限法に合わせるのが筋なのでは、と思われるかもしれませんが、多くの業者は出資法は遵守しても、利息制限法は守りませんでした。理由は簡単で、利息制限法には(出資法とは違い)刑事罰がなかったからです。

問題をややこしくした「みなし弁済」とは

みなし弁済は、貸金業法によって規定される制度です。これは簡単に言えば「利息制限法を超える金利であっても、債務者がそれを任意で払うのならば問題ないとみなす」という制度です。例えば利息25%での貸し出しであっても、債務者がそれを任意で払う分には問題なし、としていたのです。

2000年代前半までは、多くの消費者金融が2つの法律の乖離とみなし弁済という制度を武器に、利息制限法以上出資法未満の金利を元にした利息を得ていました。この金利は「グレーゾーン金利」と呼ばれていました。

利息制限法 出資法
上限金利 15~20% 29.2%
刑事罰 なし あり
みなし弁済 あり なし

しかし、このみなし弁済について最高裁が2006年1月に「債務者が利息制限法に反する金利であることを確かに認識しながら任意で支払った場合を除き、利息制限法を超える金利はすべて無効とする(みなし弁済としない)」という判決を下すと状況は一片。

これにより、実質的にすべての金融機関が享受してきたグレーゾーン金利による利息は無効となったのです。

これに伴い、2010年6月に利息制限法、出資法、そして貸金業法という3つの法律がまとめて改正されました。まず、従来刑事罰のなかった利息制限法違反には、行政処分の処罰が加えられました。出資法は上限金利が29.2%から20%まで引き下げられました。貸金業法はみなし弁済が廃止され、これによりグレーゾーン金利問題が新たに発生するリスクは一応なくなりました。

一方で、上記の判例が出されて以降、これまで過払い金を払いすぎていた人たちの間で、それを取り戻そうというムーブメントが発生しました。それに目をつけたのが大手の弁護士事務所であり、「うちの事務所にお任せいただければ過払い金を回収いたします!」という旨の積極的なCMを打つようになりました。

それは膨大な過払い金請求に繋がり、多くの大手消費者金融は経営が悪化しました。

一部の業者は倒産し、そうでない業者も多くが銀行傘下に収まりました。中でも武富士は1兆3700億円の過払い金返還請求を受けるなどして、当時も話題となりました。

迫る過払い金請求のタイムリミット


過払い金請求には時効が定められています。時効は「最後に取引をした日から10年」となっています。例えば2009年12月31日に最後の取引をした場合、時効は2019年12月31日となります。

前述の通り、2010年6月に3つの法律が改正され、グレーゾーン金利は撤廃されましたので、過払い金請求ができるのはどんなに遅くても2020年6月までということになります。

これを過ぎてしまった場合、どれだけ払いすぎていようが、過払い金請求はできなくなってしまいます。現時点で過払い金がある場合は、それまでに手続きを済ませなければなりません。

自分に過払い金があるか調べる方法は?

自分に過払い金があるかどうかを調べる最も確実な方法は、過去のすべての取引の内容を利息制限法に直して再計算する、というものです。業者に請求すれば、取引内容はわかるはずです。ただしこの計算は非常に面倒な上に難しく、素人が一人で完遂しようとしても途中で挫折するはずです。弁護士に依頼してしまったほうがいいでしょう。

業者が倒産していると過払い金請求は極めて難しくなる

上記の方法は現在も存続している業者が相手でなければ使えません。そもそも業者が倒産してしまった場合はどうすればいいのでしょうか。

この場合は残念ながら、過払い金請求は極めて難しくなります。仮に取り戻せたとしても、その割合は非常に少なくなってしまいます。

例えば武富士は2010年9月に会社更生法の適用を申請しましたが、その時の配当率はわずか3.3%でした。つまり、本来100万円の過払い金が合っても、3万3000円しか取り戻せなかったわけです。武富士以外の業者もいくつか倒産しましたが、その配当率はおおむね10%未満であり、とても労力に見合ったお金は回収できません。残念ですが、諦めたほうがいいでしょう。

逆に業者が現存している場合は、一刻も早く手続きを進めることをおすすめします。時効も怖いですが、それ以上に突然の倒産が怖いからです。

過払い金請求のデメリットとは?

過払い金請求のメリットは、もちろん払いすぎた利息が返ってくることです。人によっては数百万円クラスのお金が戻ってくることもあります。一方で、見逃せないデメリットが有ることもまた事実です。

過払い金請求の一番のデメリットは、個人では実施するのが難しいことです。制度上は素人でもできなくはないのですが、実質的には弁護士や司法書士などの力を借りないと極めて難しいと言えます。

ただし、当然弁護士や司法書士に依頼すればその分の費用がかかります。弁護士・司法書士費用の目安は返ってきた金額の20~25%程度です(司法書士の方が少し安いです)。

過払い金請求をするとブラックリストに掲載される?

現状、原則として過払い請求をしてもブラックリストに掲載されることはありません(ブラックリストというリストは金融業界には存在していませんが、信用情報機関に事故情報が登録されることを擬似的に「ブラックリストに掲載される」と表現します)。

かつては過払い金請求をした場合はブラックリストに掲載され、その後の借入が難しくなるということがあったのですが、この仕組みは2010年4月10日に廃止されました。それ以降は過払い金請求をしてもブラックリリストに掲載されることはなくなりましたし、すでに登録されていた情報もそのときに削除されました。

ただし、現時点で債務を完済しておらず、なおかつ過払い請求をしたものの実際に調べてみると過払いではなかったという場合は、その情報が5年間信用情報機関に記録されてしまいます。そのようなことがないように、事前にしっかりと本当に過払い金があるのか確認しましょう。

弁護士・司法書士事務所の選び方は?

過払い金請求は司法書士にも依頼できますが、基本的には弁護士に依頼したほうが何かと有利に働きます(少額の場合は司法書士でも問題ないことが大半ですが)。ただ、弁護士・司法書士と一口に言ってもその能力は千差万別ですので、適当に選んでしまうと後で後悔するかもしれません。

安い報酬を謳っておきながら後で何かと手数料を回収しようとするような悪徳弁護士もいますし、中には弁護士資格がないのにあると装って活動している不貞な人間もいます。そうした悪意に引っかからないためにはどうすればいいのでしょうか。

まずは弁護士事務所の得意分野をチェック!

弁護士の得意分野はそれぞれ異なります。例えば刑事事件を得意とする弁護士に過払い金請求を依頼しても、芳しい成果が出ないことは想像しやすいでしょう。過払い金請求を依頼する以上は、それを専門的に取り扱っていたり、そこまで行かずとも得意分野として掲げていたりする弁護士を選ぶべきです。

ただし、ホームページに「過払い金請求に強い」という文言が掲載されていたからと言って、それをそのまま鵜呑みにするのはよくありません。「●●の分野に強い」と謳うだけならば、どんな弁護士にもできるからです。大事なのは実績です。

実力がある弁護士ならば、それを証明するためにホームページ内で今までにどれくらいの依頼を受けて、どれくらいの成果を上げたという実績を掲げるはずです。それがない場合は、適当なことを謳っている可能性が高いと考えたほうがいいでしょう。

 無料相談で弁護士事務所の対応を確認しよう

最近は多くの弁護士事務所が無料相談を受け付けています。ですがその対応は千差万別、ピンからキリまでまちまちです。

個々での対応に難がある、例えば態度が横柄だったり、あるいは依頼をするようにしつこく求めてきたりする場合は、避けたほうがいいでしょう。無料だからといって安易に釣られないようにしましょう。

無料相談後に直接弁護士が面談してくれる事務所は良い事務所

過払い金請求を依頼したにもかかわらず、弁護士ではなく事務員が対応し続けるようなところは危険です。

過払い金請求をする権限を持っているのは最終的には弁護士だけであり、事務員はあくまでも事務のプロ、法律に多少詳しい素人に過ぎません。素人に任せるのが危険なことは、言わずともわかるでしょう。逆に弁護士が直接面談してくれる事務所は信頼に値します。

なお、中には面談すら行わず、電話と書類だけですべてを終わらせようとするような事務所もありますが、これは問題外です。

報酬体系・費用は事前に確認しておこう

過払い金請求の報酬体系は弁護士事務所によって異なりますが、

  • 着手金
  • 基本報酬
  • 成功報酬
  • 減額報酬
  • 実費

などから成り立っています。着手金と基本報酬はどちらか一方のみ、としている事務所が多いですが、もちろん両方かかる事務所もあります。

着手金とは、過払い金請求を依頼した段階でかかる費用です。結果の成否や稼働時間に関係なく一律であり、1車に付き1万円~2万円が相場です。

基本報酬は過払い金請求にかかった事務費用を負担するものです。適切かつ妥当な金額、という指針はありますが、上限は決められていません。最近は着手金だけ取って、基本報酬は取らない弁護士事務所が多いようです。

成功報酬とは、依頼が成功した場合、つまり過払い金請求に成功した場合にかかる費用です。前述の通り、相場は戻ってきた金額の20~25%程度です(和解だと20%、裁判だと25%としているところが多いです。裁判のほうが割合が多いのは、より多くの労力がかかるためです)。

減額報酬とは、現時点でまだ返済が続いている場合で、なおかつ過払い金が認められ、残債が減額された場合にかかる費用です。相場は減額された金額の10%程度です。

実費とは、事件の処理に必要な収入印紙代、切手代、交通費などを充当するための費用です。例えば記載された受取金額が100万円超200万円以下の書面には、400円の収入印紙が必要になります。

報酬が安い弁護士が良い弁護士とは限らない!

弁護士事務所によって、報酬体系は異なります。特に差が出やすいのが成功報酬です。以下の表は過払い金請求で有名な4つの弁護士・司法書士事務所の成功報酬をまとめたものですが、事務所によって大きく異なることがわかります。弁護士事務所(左2つ)よりも司法書士事務所(右2つ)のほうが休めに設定されています。

アディーレ法律事務所 法律事務所ホームワン アイザワ法務事務所 黒川事務所
和解 25% 20% 18% 15%
裁判 25% 25% 19~23% 不明

では報酬の安い事務所が良い事務所なのかと言うと、必ずしもそうとは言えません。弁護士・司法書士の中には職能レベルが低い者も居り、そうした人たちが差別化のために安い金額を設定していることもあり得るからです。たとえ成功報酬が低くても、返還額が少なくなればその分自分の取り分は少なくなってしまいます。

もちろん、本当に腕がいい上に費用がやすい事務所もあるため、安いところが悪いとも言えません。報酬だけで判断するのではなく、ここまで紹介してきた他の要素もしっかりと確認することが何より大切です。

費用が明確でない弁護士事務所は要注意!

報酬の安い高いが重要な要素であることは間違いありませんが、報酬体系が明確であることはもっと大切です。事前に「この依頼ではどのくらいの費用がかかるか」を明示できない弁護士事務所は相当危険です。裁判になった場合は追加費用がかかることがありますが、それを事前に説明しないというのはいただけません。

CMでやたらよく見かける弁護士事務所は要注意!

弁護士事務所を選ぶ際に、CMでよく見かけるからという理由で大手の弁護士事務所を選ぶ方は少なくないかと思いますが、そのような選び方はあまりおすすめできません。理由は簡単で、そういった事務所は費用が高く、にもかかわらず腕は平凡以下であることが多いからです。

CMをバンバン打つには多額の費用がかかります。その費用を捻出するためには、経費を減らして、売上を増やすしかありません。結果として受注数が増えるので弁護士が一人に回せる時間が減り、サービスの質は低下し、しかもその費用は高額となりがちなのです。もちろん多くのCMを打っていてなおかつ腕もいい弁護士事務所もあるのかもしれませんが、基本的にはあまりおすすめできません。

和解前提の弁護士事務所はやる気がない?

度重なる過払い金請求によって、消費者金融はどこも疲弊しており、資金の余裕もなくなってきています。それゆえに、和解で取り戻せる金額は低下してきています。裁判に持ち込んだほうが、より多くの過払い金を回収できる可能性が高いのです。このような環境下に置いて、なお和解を優先するような弁護士事務所は、あまり信頼できません。

弁護士費用が用意できない場合はどうすればいい?

過払い金請求には通常、着手金がかかります。この費用が払えないという場合は、法テラスを介して民事法律扶助制度を利用することをおすすめします。

民事法律扶助制度とは、弁護士に依頼したいけれど、費用が払えないという人を対象とした立て替え制度です。一時的に法テラスがその費用を立て替え、案件終了後に5000円の分割払いで費用を払っていくという仕組みになっています。

法テラスの立替制度についてさらに詳しく知りたいという方は、以下のリンクを参考にしてください。

参考記事:法テラス 民事法律扶助業務とは

過払い金請求は弁護士にとって儲かる分野である


最後に、過払い金請求の「裏」のお話をさせていただきます。弁護士事務所の「あなたのお金取り戻せます」的なCMを目にしたことがある方は多いかと思いますが、一体なぜ弁護士事務所はわざわざあのようなCMをお金をかけて流すのでしょうか。

理由は簡単で、CMを流してもなお多くの利益を挙げられるからです。ストレートな言い方をすれば、過払い金請求の業務は弁護士にとって割がいい、儲かる分野なのです。

弁護士は離婚、不動産、金銭、消費者被害など様々な分野を取り扱います。そして、分野によって業務の大変さに対する収益の大きさ、つまりは「割の良さ」はことなります。

過払い金請求業務は業務を定型化しやすく、弁護士が出張らなくてもいい部分が大きいため、多くの事務員を抱える大手事務所ならば少ない労力で多くの収益を挙げれたのです。この過払い金バブルは2000年代後半~2010年代前半まで続き、多くの弁護士事務所が「濡れ手で粟」を経験しました。

過払い金請求のトレンド

過払い金請求ブームの初期の段階では、多くの弁護士事務所が業者を相手に裁判を起こしていました。理由は簡単で、そのほうがより多くの金額を回収できたからです。いわゆる欠席裁判や、満額支払いを条件とした裁判取り下げなども相次ぎました。

ところが、暫く経つと、相次ぐ過払い金請求で体力のなくなった消費者がで始めるようになり、中には倒産するところもありました。あの武富士の倒産は、皆さんの記憶にもあることかと思います。これはまずいと見た弁護士事務所は、裁判を起こさずに和解交渉を進める戦術に切り替えました。

回収できる金額は満額の5割~8割程度と少し減ってしまいましたが、それでも十分な額を回収できるため、相変わらず過払い金バブルは続きましたが、前述の通り時効が迫っている今は、その勢いも下火になってきました。もちろん過払い金請求自体は正当な権利を行使しているに過ぎませんが、これで一番得をしたのが波に乗った弁護士というのは、なんとも皮肉な話……かもしれません。

過払い金請求バブル終焉に伴う、弁護士の次のシノギは?

過払い金請求が下火になってきた今、多くの弁護士が目をつけているとされているのが「残業代請求」と「相続」です。

残業代請求バブルは、2016年頃から始まったと見られています。

参考記事:弁護士による「残業代請求バブル」が始まった?

上記の記事によれば、2014年度に残業代賃金を是正した企業は1329社で、その金額は約142億円とのことですあり、両者ともに年々増加傾向にあります。

ただ、一方でこのような見方に対して懐疑的な弁護士も少なくありません。残業代請求は過払い金請求と比べて定型化できる部分が少なく、時効も2年間と短いためです。

残業代請求よりも、更に大きな市場として注目を集めているのが相続です。世界でも類を見ないスピードで高齢化が進んでいる日本では、今後確実に相続問題は増加すると見られています。また、2015年の相続税控除範囲の減少により、相続制課税者は4.2%から6%前後にまで増加するものと見られています。必然的に、弁護士の仕事は増えるはずです。

仮に相続税がかからない場合でも、相続で親族が揉めることなど珍しくありません。そうなれば双方に弁護士がつくわけで、1つのトラブルで2人以上の弁護士が儲かることになります。

一方で、弁護士は一般的に税務にはそれほど詳しくなく(もちろん一般人よりは高度な知識を持っていますが)、難しい部分は税理士に任せきり、という人も少なくないようです。弁護士の(ほぼ)独壇場だった過払い金請求市場と比べると、相続市場は競争も激しそうです。

まとめ

  • 過払い金とは払いすぎた利息のこと
  • 過払い金は取り戻すことができるが、業者が倒産していると難しい
  • 過払い金請求には時効があるため、早く行うに越したことはない
  • 過払い金請求をしても、ブラックリストに掲載されることはない
  • 弁護士選びは非常に大切。報酬や対応などをよく確認する
  • 過払い金請求は実は弁護士にとっても儲かる仕事

過払い金請求ができる時間は残り僅かです。現時点でその存在がすでに明らかになっているという場合は、時効が来る前にすぐに手続きを行いましょう。