FXで借金しないための仕組み「ロスカット」「ゼロカット」の違いは?

FXでの投資に失敗すると借金を背負う」……というイメージをお持ちの方は多いかと思います。

たしかにそういったケースがまったくないわけではありませんが、現代のFX会社は様々な「投資家が借金を背負わないための仕組み」を用意しているため、投資家が借金を背負うことはほとんどありません。

FXでの借金を防ぐ仕組みの二大巨塔とも言えるのが「ロスカット」「ゼロカット」です。両者は名前こそ似ていますが、全くの別物です。

今回の記事ではこの仕組みの内容やその違い、採用しているFX会社などをまとめて解説いたしますので、FXで借金を背負いたくないという方はぜひご一読ください。

そもそもFXで借金を背負ってしまうことがあるのはなぜか?

FXには「レバレッジ」という仕組みが存在するためです。

レバレッジとは直訳すれば「てこの力、てこ装置」ですが、FXの世界では「預け入れた少額の元手(証拠金)を担保にすることにより、その何倍もの金額の取引ができる仕組み」のことを指します。

普通に考えれば10万円の元手では10万円分の投資しかできないはずですが、FXの世界では10万円を元手に100万円、1000万円、さらには1億円の取引ができることもあるのです。

レバレッジは基本的に「倍」で表現します。例えば10万円の元手で100万円分の取引をするならレバレッジは10倍、1000万円分の取引をするならレバレッジは100倍です。

レバレッジが大きくなると、利益も損失も増えます。例えばレバレッジを10倍にした場合、レバレッジを掛けなかった場合(1倍の場合)と比べて、同じ為替変動でも利益や損失は10倍になります。

どうして元手の何倍もの金額の取引ができるの?

理由は簡単で、FXは差金決済を採用しているからです。差金決済とは、簡単に言えば、取引の結果生じた利益もしくは損失のみを決済する仕組みです。

例えば、1ドル=100円の時点で、FX口座に預け入れた10万円を元手に100万円分(1万通貨)の買いポジションを取り、その後1ドル=101円になったら解消するとします。

このとき、100万円で買いポジションを取り、それを101万円で解消したことになるため、その差額(利益)は1万円です。この金額がFX口座に振り込まれるので、口座の残高は11万円となります。

逆に1ドル=99円になった時点で買ポジションを解消した場合、その差額(損失)は1万円であり、この金額がFX口座から引き落とされるので、口座の残高は9万円となります。

このようにFXは差額のみをやり取りする仕組みであるため、少額の証拠金でもレバレッジを効かせた取引ができるのです。

この仕組みが借金を背負う原因では?と気づいた方は非常に鋭いです。例えば上記の例では1ドル=85円になった時点で買いポジションを解消すると、その差額(損失)は15万円であり、FX口座の残高である10万円を超えてしまいます。その場合、足りない5万円は投資家の借金ということになります。

こうした自体の発生を防ぐのが「ロスカット」です。

ロスカットってどんな仕組み?

ロスカットとは、顧客が保有しているポジションの含み損が大きくなったときに、さらなる損失の拡大を防ぐために強制的に決済する仕組みのことです。

含み損が口座残高を超える前に強制的に決済してしまえば、そもそも借金を背負うことはなくなります。例えば先の例では、1ドル=90円になる前にロスカットする仕組みがあれば、借金を背負うことはありません(FX口座のお金はもちろん減りますが)。

どんな事があっても1ドル=93円になったら強制決済する、ということにしておけば、最大でも損失は7万円になるため、10万円を預け入れている顧客は借金を背負わずに済みます。

FX会社ごとにロスカットの基準は異なる

ロスカットの仕組みは国内・海外すべてのFX業者で採用されている(はず)ですが、どれくらい含み益が大きくなった時点でロスカットを行うのかというのはFX会社毎に異なります。

ロスカットの基準が厳しい(例えば1ドル=99円になった時点でロスカットする)FX会社は、損失を小さく抑えられる一方で、ちょっと含み損が出るだけで強制決済されてしまうという欠点もあります。

一方、ロスカットの基準が緩い(例えば1ドル=91円になった時点でロスカットする)FX会社はロスカットが起こりづらい反面、強制的に決済してもらえないため、ズルズルと含み損を抱えてしまいがちという欠点もあります。どちらも一長一短というわけです。

ロスカットの基準を決める「証拠金維持率」とは

各FX会社がロスカットを行う基準として公表しているのが「証拠金維持率」です。各FX会社は顧客の証拠金維持率が一定値を下回った段階で、ロスカットを行います。

したがって、ロスカットされたくないのならば、証拠金維持率が常に高くなるように務めるべき、と言えます。証拠金維持率は、以下の式で計算できます。

  • 証拠金維持率=純資産÷必要証拠金×100%
  • 純資産=FX口座残高に含み益・含み損を加味したもの
  • 必要証拠金=取引額÷レバレッジ

この式を見ただけではよくわからないという方も多いかと思いますので、具体的な数値を当てはめて確認してみましょう。

例えば、FX口座に10万円を預け入れ、レバレッジ25倍で、1ドル=100円のときに、1万ドル(100万円分)の取引を買ポジションを取ったとします。

この時点での純資産はFX口座の残高と同じ10万円です(まだ含み益も含み損も発生していないため)。

一方、必要証拠金は100万円(100円×1万通貨)÷25倍≒4万円です。したがって、証拠金維持率は

10万円÷4万円×100%=250%となります。

ではこのあと、買いポジションを取ったにもかかわらず、1ドル=95円にまで値動きしてしまったときはどうなるでしょうか。

このとき、含み損は5万円なので、純資産は10万円-5万円≒5万円となります。

一方、必要証拠金は95万円(95円×1万通貨)÷25倍=3.8万円です。したがって、証拠金維持率は

5万円÷3.8万円≒131.5%となります。含み損が拡大したことにより、証拠金維持率が下がってしまいました。このように含み損が拡大すると、証拠金維持率はどんどん下がっていきます。その結果一定値を下回った場合にロスカットが行われるのです。

なお、前述の通り、ロスカットを行う証拠金維持率はFX会社によって異なります。例えば国内業者のGMOクリック証券は50%ですが、外為どっとコムは100%です。

海外業者のXMは20%で、Gemforexも20%です。一概には言えませんが、おおむね海外業者のほうが証拠金維持率が低い(ロスカット基準がゆるい)傾向が見られます。

ゼロカットってどんな仕組み?

ゼロカットは、ロスカットの仕組みがうまく働かなかったときでも顧客を守るための仕組みです。万が一FX口座の残高がマイナスになってしまったときに、FX会社がその借金を肩代わりします。

ロスカットは強制決済の仕組みですが、相場急変時にはうまく動作しないことがあります。うまく動作しなかった場合、損失がFX口座の損失を上回ってしまうこともあります。

このとき、通常ならばその上回ったぶんは顧客本人の借金となるのですが(このときの顧客への支払い請求を追証といいます)、ゼロカットを採用しているFX会社は、顧客に変わってその借金を引き受けます。

顧客のFX口座残高がマイナス100円でも、マイナス1億円でも、等しく0までカットされます。ゼロカットシステムを採用しているFX会社を使っている限り、借金を背負うことはありません。

ただ、ゼロカットはロスカットと違い、すべてのFX会社で採用されているわけではありません。海外のFX会社では広く採用されていますが、国内のFX会社では全く採用されていません。借金を絶対に背負いたくないという場合は、海外のFX会社を使うべきです。

なぜ国内のFX会社はゼロカットを採用しないの?

FX会社が「私達がゼロカットを採用しない理由はこれです!」などと公表しているわけではないので推測になってしまいますが、おそらく国内のFX会社はノミ取引をしているためだと思われます。ノミ取引とは実際には顧客から受けた注文を市場で発注せずに、FX会社が自ら胴元となる仕組みのことを指します。

顧客の予想が当たった場合、FX会社は顧客に対してお金を払うので損します。外れた場合はお金を受け取るので得します。つまり、顧客とFX会社、どちらか一方が得をすうれば、もう一方は必ず損をする仕組みになっているのです。

国内FX会社からすれば、顧客の損失は自らの収益です。せっかく顧客が多額の損失を出してくれたときに、それをゼロカットで穴埋めしていたら自らの収益がなくなってしまいます。だからこそ国内FX会社は皆一様にゼロカットを採用しないのです。

一方、海外FX会社はノミ取引は行わず、実際に市場で注文をおこない、その際の手数料を収益としています。その顧客が儲けたか否かは、FX会社にとっては関係ないことです。

この仕組みのもとでは、FX会社は取引高を増やすことが自分の利益につながるため、顧客が安心してFX市場に参戦できる仕組みを整えます。ゼロカットもその施策の1つというわけです。

ゼロカットでFX会社が倒産することはないの?

あります。スイスフランショック時には、海外の有名FX会社であるアルバリUKが、顧客の膨大な損失をカバーしきれずに倒産してしまいました。ただし、同社は顧客の財産を信託保全(顧客から預かったお金を信託口座に預け入れて管理すること)していたため、顧客の財産はキチンと守られました。

海外FX会社の中には信託保全を採用していないところもあるので、利用の際には気をつけましょう。

海外FX会社の選び方は?

前述の通り、海外FX会社の多くはゼロカットシステムを採用している上、最大レバレッジも高いところが多く、総じて顧客には優しい作りになっています。「海外FX会社って危なくないの?」と思われるかもしれませんが、最近は安心して使えるところも増えてきていますし、ウェブサイトはもちろんサポートまで日本語に対応している所も多いです。

ただ、その一方で依然として怪しい海外FX会社が残っているのも事実です。海外FX会社を選ぶときには、以下の点をチェックしてみるといいでしょう。

金融ライセンス

金融ライセンスとは、ある国で金融業を営むための許可のことです。多くの国では金融業を営むためには監督機関の認可が必要です。日本の場合は金融庁が監督機関です。

海外FX会社は当然日本の金融庁の認可を得ていませんが、そのかわりに他の国の監督機関の認可を得ていることが多いです。金融ライセンスがない海外FX会社は、たとえ他のサービスが優れていても利用を避けたほうがいいでしょう。

一方、金融ライセンスがあるFX会社は全て一様に安心なのかというと、そうとも言えません。国によって監督機関の審査の厳しさには差があるからです。例えば

  • キプロス
  • イギリス
  • ニュージーランド

などの国は、比較的審査が厳格であり、この金融ライセンスを持っていれば信頼度は高いと言えるでしょう。

逆にマイナーな国の金融ライセンスはあまり意味がありません。審査が簡単で、信頼できないことも多いです。

日本語対応度

最近は日本語対応をうたう海外FX会社も増えてきていますが、そうしたFX会社が必ずしも使いやすいかというとそうとも限りません。

  • 日本語対応しているのはメインのウェブページのみ
  • ウェブサイトは日本語だがサポートは英語のみ
  • そもそもウェブサイトの日本語が自動翻訳レベルで稚拙

ということも十分ありえます。どれくらい日本語に対応できているかは、実際にそのFX会社のWebサイトを回ってみて確認するしかありません。「日本人がサポートに当たっている」などの文言があれば、確かな日本語サポートが期待できるでしょう。

運営歴

運営歴が長いということは、それだけの間信頼を失うことも、淘汰されることもなかったということです。運営歴の長さは、それだけで信頼性を証明してくれます。

何年以上あれば十分か、という線引きは難しいですが、少なくとも運営歴が1年未満のFX会社の信頼は無に等しいです。もちろん、どんな大企業も最初は運営歴1年未満でしたし、ここから超大手に育つ可能性もなくはありませんが、安心を重視するなら5年以上のところを選ぶといいでしょう。

最大レバレッジの高さ

最大レバレッジは原則として、高いに越したことはありません。最大レバレッジではリスクが高すぎると思うなら、それよりも低く設定すればいいだけの話だからです。基本的には100倍以上あればいいかと思いますが、一発逆転をどうしても狙いたいという場合は500倍超えの取引所を選んでもいいかもしれません。

まとめ

  • ロスカットとゼロカットはどちらもFXにおける借金を防ぐ仕組みだが、その内容は大きく異なる
  • ロスカットはすべてのFX会社で採用されている、強制損切の制度
  • ゼロカットは海外のFX会社で採用されている、借金(追証)発生時の借金カット機能
  • より安全な取引を望むなら、ゼロカットありの海外FX会社を選ぶべき

FXを始める上では、その仕組をしっかりと抑えておくことが肝心です。今までロスカットとゼロカットの違いについてよく理解していなかったという方も、これからはより安心して取引に望めることでしょう。