ブックメーカーって稼げるの?アービトラージなら絶対負けないって本当?

ブックメーカーに興味はあるけど、損失を出すのはやっぱり怖い……」「絶対に負けない手法があったらいいのに……」ギャンブルに挑戦した事があるなら、誰もが一度はこのようなことを考えたことがあるかと思います。実は、ブックメーカーには「絶対負けない手法」というものが存在します。それがアービトラージです。

「絶対に負けないなんて嘘に決まってるだろ」いいえ、本当です。アービトラージは理論上、100%絶対に負けない、確実に儲かる手法です。「ならなんでみんなそれを実践しないんだ?」その理論通りに賭けを実行するのが極めて難しいからです。

今回の記事ではアービトラージの方法と、なぜそれを正しく実行するのが難しいのかについて解説いたします。

アービトラージは「正しく実行すれば」100%稼げる手法

アービトラージとは、ブックメーカーごとに設定されたオッズが異なることを利用して、どのような試合結果が出ても利益が出るようにする賭け方です。ブックメーカーの本場イギリスには2000以上の公認ブックメーカーがあると言われています。そして、ブックメーカーごとにオッズは微妙に異なります。この微妙な差異を生かして、どのように転んでも儲けるようにするのがアービトラージです。

サッカー日本代表とドイツ代表の試合の結果を当てるギャンブルについて考えてみましょう(現実では日本代表とドイツ代表の試合が行われる予定はありませんが、ここでは今行われるものとします)。

日本代表とドイツ代表では後者のほうが強いため、日本代表のオッズは高く、ドイツ代表の方は低く設定されるはずですが、どれくらい両者に差をつけるかはブックメーカーのさじ加減次第です。ここでは、3つのブックメーカーが以下のようにオッズをつけたと仮定します(引き分けはないものとします)。

  • ブックメーカーA:日本代表3.80 ドイツ代表1.20
  • ブックメーカーB:日本代表3.30 ドイツ代表1.37
  • ブックメーカーC:日本代表3.55 ドイツ代表1.27

この時、最も日本代表のオッズが高いブックメーカーBで日本代表に264ドル、最もドイツ代表のオッズが高いブックメーカーAでドイツ代表に736ドルを賭けます。合計賭け金は1000ドルです。

もし日本代表が勝てば、264ドル×3.80=1003.2ドルとなり、3.2ドルの黒字になります。ドイツ代表が勝てば、736ドル×1.37=1008.32ドルとなり、8.32ドルの黒字です。試合結果にかかわらず、必ず黒字になります。これがアービトラージの基本的な仕組みです。

通常のブックメーカーが「正しい結果を予測する賭け方」を探すものであるのに対して、アービトラージは「どんな結果が出ても利益が出る賭け方」を探すものであると言えます。

なぜブックメーカーごとにオッズが異なるの?

ブックメーカーはそれぞれ、独自の方法でオッズを設定しています。ブックメーカーごとにオッズが異なるのはそのためです。

近年のブックメーカーは基本的に、過去の統計データを元にオッズを決定しています。例えば、上記の日本代表とドイツ代表の試合のオッズを決める場合、まずは両者が直接対決でどのような結果を残しているかを確認します。過去の試合の成績は2試合で日本の1敗1引き分け、総得点は日本2に対してドイツ5なので、ドイツのほうが有利であることがわかります。

ただ、この2試合はいずれも10年以上前の試合の結果であり、当時とは代表メンバーがほぼ完全に入れ替わっています。これだけでは十分な資料とは言えないため、両者が直接対戦していない試合も参考にします。例えばドイツ代表は最近調子がいいとか、日本代表は監督が変わったとか、そうしたことも考慮します。

また、最近は影が薄くなりましたが、オッズコンパイラーの意向もオッズに影響します。オッズコンパイラーとは、豊富な計算とスポーツに対する知識を持つ、オッズを決める専門スタッフです。

ビッグデータを簡単に扱えるようになった今、彼らの意見の比重は徐々に小さくなっては来ていますが、それでも全く無視できるものでもありません。

過去のプレイヤーの賭け方もオッズを決める要素の1つです。例えば、「日本代表4.50、ドイツ代表1.10」とオッズを設定したところあまり賭け金が集まらなかったけれど、「日本代表3.50 ドイツ代表1.30」というオッズを設定したところたくさん賭け金が集まった、という経験をしたことがあるブックメーカーは、今回も後者に近いオッズを設定するはずです。

アービトラージは稼げるのになぜ実行されないのか?

アービトラージが絶対に負けない手法であるにもかかわらず、ほとんど誰にも実行されない理由は簡単で、実行するのはほぼ不可能だからです。「理論上は可能だが、それを人間が実行するのは不可能である」というわけです。

「正しい組み合わせ」は人力ではまず探せず、ツールの利用は有料

アービトラージを成功させるためには、前述の2000以上のブックメーカーの中から、アービトラージが成功する組み合わせを見つける必要があります。多数のブックメーカーで行われている賭けの種類を逐一確認するというのは、人力ではまず不可能であると考えたほうが良いでしょう。

最近はアービトラージの適切な組み合わせを自動で検索し、良いものがあったら教えてくれるアラートサービスもあるのですが、こうしたサービスは大抵が有料ですし、サービスも長続きしません。アービトラージの利益率は通常0.5~3%程度なので、よほど上手に使わない限り、その料金のほうがアービトラージで得た利益を上回ってしまいます。

オッズは頻繁に変化する

実は、ブックメーカーのオッズというのは頻繁に変化します(賭けた後で変わることはありませんが、賭ける前には頻繁に変化します)。なので人力、もしくはアラートで適切な組み合わせを見つけられとしても、賭ける画面ではもうオッズが変わっていてアービトラージが成り立たなくなった、などということもしばしばあります。

資金を複数のブックメーカーにプールさせておく必要がある

適切な組み合わせを見つけられた時に直ぐにベットできるように、複数のブックメーカーにある程度の資金をプールさせておく必要があります。流石に2000のブックメーカー全てに資金を置いておくというのは現実的な選択肢ではありませんが、最低でも5、できれば10以上のブックメーカーに資金を置いておかなければならないでしょう。

1つあたりのブックメーカーに置く金額がある程度ないとほとんど儲からないことを考えると、最低でも1万ドル程度の資金は必要になると考えたほうが良いでしょう。

MAXベット制限がある

多くのブックメーカーでは、MAXベット制限という仕組みを採用しています。これは簡単に言えば、勝ちすぎるとそのアカウントで賭けられる金額が極端に少なく制限されてしまうことです。

アービトラージはその手法上、1つのブックメーカーに勝ちが集中してしまうことがあります。そうなった場合に、ブックメーカーは特定のユーザーの勝ちすぎを防ぐために、賭けられる金額を制限するのです。

制限後に賭けられる金額はせいぜい10ドルが良いところです。アービトラージの利益率は高くても3%程度ですので、10ドル×3%=0.3ドル≒35円程度の利益しか挙げられなくなってしまいます。これではとても割に合いません。

そもそもアービトラージはほとんどのブックメーカーで規約違反

ブックメーカーにとって、アービトラージという手法は大敵です。そのため、ほとんどの大手ブックメーカーはアービトラージを禁止しています。

その賭け方がアービトラージかどうかを判断するすべはないのでは、と思われるかもしれませんが、ブックメーカーは「疑わしきは罰する」の態度で、中途半端な額を賭け続けてたり、やたらと勝ち続けていたりするアカウントに対しては上記のMAXベット制限、あるいはアカウントそのものの凍結という措置を割とすぐにしてきます。

アービトラージは稼げる手法ではなかった!他にいい方法はないの?

アービトラージが事実上実行不可能なことは十分理解いただけたかと思います。それでもやりたいというのならば止はしませんが、個人的には全くおすすめできません。

「アービトラージが成り立たないなら、他にいい賭け方はないの?」と思われるかもしれませんが、あります。ブックメーカーと違って100%負けない手法ではありませんが、賭け方の簡単さ、凍結リスクの低さなどを考えると、アービトラージよりはずっとおすすめできます。

ここでは多くのブックメーカーで簡単に実践できる、「負けづらい賭け方」を提案します(あくまでも期待値を高めるというだけであり、必勝法ではありません。そもそもギャンブルは運に恵まれない限りやればやるほど負ける確率が高まるものですので誤解なきように)。

基本的には本命を狙う

ギャンブルには、当たりやすいがオッズの低い「本命狙い」と、当たりづらいが配当も大きい「大穴狙い」があります。先程あげた例で言えばドイツ代表に賭けるのが本命狙い、日本代表に賭けるのが大穴狙いと言えるでしょう。

どちらも一長一短に見えますが、総合的に考えた場合、本命狙いのほうが勝ちやすい(トータルでプラスになりやすい)といえます。

ギャンブルの世界には「本命-大穴バイアス」というものが存在すると指摘されています。これは簡単に言えば、本命の実力は過小評価されやすく(その結果期待値が高くなりやすい)、大穴の実力は過大評価されやすい(その結果期待値が低くなりやすい)という、人間の偏った見方のことを言います。

本命のプレイヤーは、このバイアスによって実力を不当に低く評価されるため、実力よりも高いオッズが付きがちです。逆に大穴のプレイヤーは、このバイアスによって実力を不当に高く評価されるため、実力よりも低いオッズが付きがちです。必然的に、本命の期待値は高く、大穴は低くなるのです。

1997年にエコノミック・ジャーナルに掲載された論文では、1992年にイギリスに行われた競馬を元に実証を行い、確かにそれが存在することが確認されています。

この論文では、オッズが2倍以下の出走馬に賭けた場合は損失が7%にとどまるのに対して、オッズが40を超える出走馬に賭けた場合は損失が40%にまで膨らむと指摘されています。このような傾向は競馬だけでなく、ブックメーカーの対象となるテニスでも確認されています(参考記事:本命–大穴バイアスとは)。

ギャンブルに限らず、人間は微小確率を過大評価する傾向があります。大穴が勝つような微小な確率でしか発生しない出来事を、実際よりも高い確率で起きると勘違いしてしまうのです。逆に高い確率で起きることは過小評価する傾向があります。

  • 実際には殆ど起こらない飛行機事故を恐れるのに、それより遥かに頻繁に起きる自動車事故には無頓着(911後の米国では自動車での異動を好む国民が増え、その結果交通事故死亡者が増加した)
  • ゲームで命中率90%以上の技がやたらと外れているように感じる
  • めったに起こらない副作用を恐れて予防接種を受けない
  • 期待値50%以下だが1等が3億円の宝くじを購入する

上記のような、一般的には間違った判断を一度もしたことがないという方はまずいないでしょう。このバイアスは人間そのものに備わったものであるため、通常はなかなか逃れることが出来ません。それでも、バイアスの存在を知っておけば、本命に賭けることを厭わなくなるはずです。

複雑な賭け方は避ける

ブックメーカーで提供されるギャンブルには、試合で勝つチームを予測するような単純なものから、試合の途中経過を当てるもの、試合の結果をスコア含めて完璧に予想するものなど、より複雑なものもあります。

そして、基本的に賭け方が単純で、選択肢が少ないものほど、期待値が高くなりやすいです。複雑な賭け方は大穴のオッズが高くなりやすく、そうなっても利益が出るようにブックメーカー側が抑制しているからです。基本的には2社択一のような、単純なものを選びましょう。

まとめ

  • アービトラージはブックメーカーごとのオッズ差を利用して必ず儲ける手法
  • アービトラージは理論上は絶対に負けないが、様々な都合上実践するのはほぼ不可能
  • 多くのブックメーカーはアービトラージを禁じており、バレればアカウント凍結もありうる
  • 基本的には本命に単純な賭け方をするのが最も期待値が高くなりやすい

アービトラージはおもしろい戦術ではありますが、現実的な手法ではないのも事実です。実行する場合は必ず、自己の責任のもとで行いましょう。