ブックメーカーで大きな稼ぎを得た場合、その稼ぎに応じて税金を払わなければなりません。ネット上では「ブックメーカーで得た所得は隠せるので税金を払う必要もない」といった情報を目にすることがありますが、そうした情報をうのみにするのは大変危険です。
もちろん、うまくやれば隠しきれるかもしれませんが、大抵の場合はバレますし、その場合あとで正規の税金よりも多い追加徴税を支払うことになります。自力で稼いだお金の一部を税金で持っていかれるのは非常にしゃくですが、きちんと納税しましょう。
ただし、合法的な節税はどんどん行っていくべきです。必要以上の税金を払ってやらねばならない義務はありません。あなたが合法的に儲けたお金はあなたのものです。かかった経費はどんどん計上していきましょう。
目次
あなたはどのように税金を取られているか?
個人が何らかの形で所得を得た場合、その金額に応じて「所得税」と「住民税」という2つの税金を支払わなければなりません。
所得税と住民税は、どちらも課税所得に税率をかけたものになります。課税所得とは、所得(収入から支出を引いた正味の儲け)に、更に所得の性質やその人の状況によって加味される控除を差し引いた、税金の対象となる所得のことです。
例えば所得が同じ金額であっても、控除の対象となる理由(障害者である、勤労学生であるなど)があれば、そうでない人よりも税金は安くなります。
所得税の税率は5%~45%(控除あり)、住民税は10%です。たくさん稼いでいる人の場合、所得税45%+住民税10%で、所得の55%を税金として持っていかれることになります。
所得から課税所得を計算し、それを元に所得税、住民税の計算をして、それを税務署に申告することを「確定申告」といいます。会社員や公務員のような給与所得者の場合、通常は会社や自治体などがその作業を肩代わりしてくれるため、社員や職員が自ら確定申告を行う必要はありません。
しかし、本業以外(ブックメーカーを含む)で何らかの所得を得た場合は、自分で確定申告を行わなければならないことがあります。
自営業者の場合は普段から本業で得た所得を申告するための確定申告を行っているはずですが、本業以外で何らかの所得を得ている場合は、そちらも併せて申告しなければなりません。
今回の記事は普段自分で確定申告をやらない会社員・公務員の方向けの内容になっていますのでご了承ください。
税金を払わないとやってくる恐怖の「追加徴税」とは
確定申告は自分で自分の所得を申告する制度なので、中には所得を過少申告したり、あるいは申告そのものをしなかったりするような人もいます。
また、悪意はなくとも申告が遅れてしまったりすることもあります。こうした行為が必ず明るみになるとは限らないのですが、明るみになった場合は追加徴税という非常に恐ろしい罰が待っています。
追加徴税とは、申告漏れや脱税などが発覚した場合に追加で払う税金のことで、行政的制裁の観点から、問題なく申告した場合よりも多くの税金を払うことになります。自己申告ならばバレないのでは?と思われるかもしれませんが、税務署は定期的に税務調査をするため、隠し切るのは至難の業です。
追加徴税には、延滞税と加算税があります。延滞税とは利息のようなもので、納期の期限を過ぎた場合に、その期限の長さに応じて課される税金です。故意、過失に関係なく、一定の税率が適用されます。納期限翌日から2ヶ月間は7.3%、それ以降は14.6%です。
加算税は罰金的な意味合いを持つ税金であり、更にいくつかの区分があります。
加算税の種類 | 概要 | 税率 |
過少申告加算税 | 期限内に確定申告書を提出した後、修正申告書を提出した、もしくは更生したことによって追加税額が発生した場合に課税される税金。 | 不足した税額の10%(期限内確定申告額、もしくは50万円を超える部分は15%)。例えば当初の納付税額が5円、本当の税額が15万円だった場合、(15万円-10万円)×10%=1万円が過少申告加算税として回収される。 |
無申告加算税 | 期限までに申告しなかった場合に課される税金。税務署の調査で発覚した場合と、税務署の調査前に期限後申告した場合で税率が異なる。 |
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不納付加算税 | 源泉所得税の納期限に遅れた場合に課される税金。税務署の調査で発覚した場合と、税務署の調査前に期限後申告した場合で税率が異なる。 |
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重加算税 | 本来払うべき税金を意図的に隠蔽、若しくは仮装した場合に課される税金。 |
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追加徴税の中でも最も重いのが「重加算税」です。例えば裏帳簿を作成していたり、架空の経費を計上していたり、税務調査で虚偽の答弁をしたりした場合に適用されます。
重加算税に該当するかを決めるのは最終的には税務署側であるため、突かれないように万全の備えをしておくべきです。
所得の区分は10種類!ブックメーカーで得た所得はどこに入る?
実は所得というのは、その性質によって10種類に細分化されています。例えば会社員や公務員が得ている給与や賞与などの所得は「給与所得」、個人事業主が事業で得ている所得は「事業所得」に含まれます。
マイナーなところでは山林を売って得た「山林所得」というものもあります。同じ金額を所得として得ていても、区分によって最終的に支払うことになる税金は変わってきます。
ブックメーカーで得た利益がこの内どこに含まれるのかというと……実は定まっていません。ブックメーカーというのは歴史が浅く、法的な位置づけも定まっていないので、そこで得た所得がどこに含まれるか、もきちんと定義されていないのです。
ただ、一般的には
- 一時所得:営利を目的とする継続行為以外で生じた所得で、労務や約無の対価、資産の譲渡の対価としての性質を有しない所得。
- 事業所得:事業によって得られた所得。
- 雑所得:他のいずれの種類にも当てはまらない所得。
のいずれかに分類されます。ブックメーカーは遊びであり、その結果所得が得られたと考えるのなら一時所得が妥当ですし、所得を得るための事業として取り組んでいると考えるなら事業所得が妥当です。どちらにも該当しないなら雑所得が妥当です。
そして、この3つの所得にはっきりとした定義はなく(特に一時所得と雑所得の境界は曖昧です)、どれで申告しても問題ない事が多いです。
ただし、事業所得として認められるためには事業として本格的に取り組んでいることを見せる必要があります。また、事業所得として計上する場合は、帳簿の作成も必要になります。これは面倒なので、所得がそれほどでもない場合は、一時所得か雑所得で申告するのがいいでしょう。
どちらが得になるかは、人によって異なりますが、基本的には雑所得のほうが経費の範囲が広く、おすすめです。ただし,一時所得にもメリットがあります。
一時所得には50万円の特別控除枠があります。また、一時所得の課税所得は実際に得た所得の2分の1になるという優遇措置もあります。
例えば、ブックメーカーで50万円の賭けを行って、150万円が帰ってきたとしましょう。
この場合、所得は180万円-50万円=130万円ですが、一時所得の場合はさらにここから特別控除枠50万円を差し引いて80万円とすることができます。更にこれを2分の1にできるので、課税対象は40万円となります。
一方、雑所得にした場合は、180万円-50万円=130万円がそのまま課税所得となってしまいます。
ただし、一時所得は経費の範囲が狭いという欠点もあります。
例えば、競馬で5レースにそれぞれ100万円ずつ掛け、その内1レースで的中し500万円が帰ってきたとします。これを雑所得として計算する場合、外れたレースに掛けていた金額も経費とみなされるため、収入500万円、経費500万円で所得は0円となるため、課税所得も0円となり、したがって税金も0円です。
一方、一時所得とする場合は、当たったレースに掛けていた100万円分しか経費とみなされないため、課税所得は(500万円-100万円-50万円)×1/2=175万円となり、税金が発生します。実質的な儲けは0円であるにもかかわらず、です。
一時所得と雑所得の経費の違い
前述の通り、一時所得と雑所得では経費の範囲が違います。一時所得の世界においては、「その収入を得るために支出した金額」だけが必要経費とみなされます。
一時所得として計上する場合はハズレ馬券の購入費用とみなされないのと同様に、ブックメーカーでも外れた予想に賭けた金額については経費とみなされないと考えたほうが良いでしょう。
一方、雑所得の場合は外れた予想に掛けた金額についても経費とみなされます。また、それ以外の費用、例えばギャンブルに勝つための勉強に使った本の書籍代なども経費とみなされる可能性が高いです。
経費が増えるほど所得、ひいては課税所得も少なくなるのでその分節税が可能になります。
「会社員は雑所得が20万円以下ならば申告しなくていい」は嘘
「会社員や公務員の場合、雑所得が20万円以下ならば申告は一切不要である」ということを聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。結論から言えば、これは間違いです。
会社員や公務員、すなわち給与所得者であった場合、雑所得が20万円以下ならば、(いくつかの条件を満たせば)確定申告をしなくていもいい、というのは事実です。
ただしその場合、自治体に対して「住民税の申告」という手続きをしなければならなくなります。どちらにせよ、何らかの申告はしなくてはいけないということです。
いちいちどちらに当てはまるかを判断するのも面倒ですし、基本的にブックメーカーで所得を得た場合は必ず確定申告をしたほうが良い、と考えてしまったほうが楽です(雑所得が少なければ税額も少ないので心配は不要です)。
合法的な節税のやり方
節税とは言ってしまえば、経費を計上することです。経費が増えれば増えるほど所得が減り、所得税や住民税が減ります。では経費を増やすためにはどうすれば良いのかというと、経費を払った証拠をきちんと残す必要があります。
いくら申告者が「仕事のために書籍を買った」と主張しても、それを証明するものがなければ経費として認められなくなる可能性があります。
税務署にあとで突付かれないように、領収書はしっかりと保管しておきましょう。領収書がもらえない支出の場合は、通帳の記帳などが変わりの証拠となることがあります。
また、状況によっては「経費と言えるか微妙な支出」も出てくるかと思います。例えばブックメーカーの予想はウェブを通じて行いますが、この際の通信費や端末の購入費用などは判断が難しいところです。
端末をブックメーカー以外のことにも使用している場合、更に判断はややこしくなります。こういった場合は自分で勝手に解釈せず、税務署に相談することをおすすめします。
給与所得者が確定申告する方法
ここからは具体的な確定申告のやり方について解説いたします。確定申告のやり方は大きく2つに分けられます。すなわち
- 税理士に依頼する
- 自分でやる
の2種類です。所得額が多い場合は、基本的に税理士に依頼することをおすすめします。所得額が多いと収入や経費をまとめるだけでも手間がかかりますし、申告漏れが合った場合の追加徴税額も大きくなりがちだからです。このような場合、税理士に依頼すれば安全と安心が買えます。
費用はかかりますが、所得額が多いのだから大した負担にはならないでしょう。信頼できる税理士を探し出して、相談してください(税理士の探し方は後述します)。
一方、所得額がそれほど多くない場合は、自分で確定申告をすることをおすすめします。所得額が多くないのならば、手続きは大して難しくありません。
給与所得者が確定申告するための手順
給与所得者が確定申告をするためには、「給与所得」と「雑所得・一時所得」のそれぞれを割り出す必要があります。
まず、給与所得については、源泉徴収票から計算します。源泉徴収票とは、会社からもらえる書類です。通常は、毎年12月の給与支給後にもらえます。ここに給与が書かれていますので、それを確定申告書に転記します。
次に、ブックメーカーで得られた雑所得・一時所得を計算します。前述の通り、雑所得にした場合と、一時所得にした場合では、経費の範囲が異るため注意しましょう。
繰り返しになりますが、ブックメーカーでは経費が大きくなりがちなので、基本的には雑所得として計上することをおすすめします。
いくら賭けたか(経費)、その結果いくら儲かったか(収入)はブックメーカーのWebサイトなどから確認してください。それ以外の経費については、前述の通り領収書などから計算しましょう。
領収書が残らない場合の経費支出については、銀行口座の記帳やクレジットカードの利用履歴などで代用できます。現金払いはいざというときの証拠が残りづらいので、なるべく避けることをおすすめします。
収入と経費を計算するための資料が揃ったら、給与所得と雑所得がいくらになるのかを計算して、確定申告書に記載します。
なお、確定申告書には「確定申告書A」と「確定申告書B」があります。給与所得者が雑所得や一時所得を得ている場合は、確定申告書Aに記入します。
雑所得や一時所得として計上する場合、帳簿は不要
ブックメーカーで得た所得を雑所得や一時所得として計上する場合、帳簿の作成は不要です(事業所得として計上する場合は必要)。帳簿とは取引の内容を記録するための、高度な家計簿のようなものです。
ただし、その場合でも、経費を証明するための書類の保管は必要になります。領収書などはなくさないようにクリアファイルに入れてとっておくと良いでしょう。
会社への副業バレを防ぐ方法
ブックメーカーを含めた副業で大きく稼ぐことは悪いことではありませんが、やっかみや面倒を避けるために、会社にはバレずに確定申告を行いたいという方も少なくないと思います。
会社にブックメーカーで得た所得がバレる主なルートは「住民税」です。ブックメーカーで所得を得ているぶん住民税が大きくなってしまい、それが会社に伝わってバレる、というものです。
これを防ぐためには、確定申告書Aにある「住民税・事業税に関する事項」を少し工夫する必要があります。ここでは住民税の徴収方法を「給与からの天引き」もしくは「自分で納付」から選択することが可能ですが、ここで後者を選ぶのです。
自分で納付を選べば、会社には住民税が増えたことは通常バレません。ただし、市区町村によってはそうでないこともあります。どうしてもバレたくない場合は、事前に市区町村に相談しておいたほうが良いでしょう。
また、この方法を選んだ場合、当然自分で納付することになります。忘れずにしっかりと払いましょう。
確定申告について相談したい場合はどうすればいい?
確定申告についてわからない事がある場合は、税務署に相談することをおすすめします。
税務署と聞くとなんだか暗そう、対応が悪そうと思われるかもしれませんが、税務署職員は、自ら税金を払おうとする意欲がある人に対しては丁寧に接してくれます(もちろん、職員によって対応に差はありますが)。税務署からしてみれば納税者はお客様であるため、無碍に扱われることはまずありません。
税理士に相談するという手もありますが、こちらは基本的には有料です。税理士をウェブ上で探したい場合は、以下のWebsiteが役立ちます。
まとめ
- ブックメーカーで所得を得た場合は確定申告が必要
- 確定申告をしなかった場合、税金を余計に払わなければならない
- ブックメーカーで得た所得は一時所得か雑所得に含まれる
- 雑所得のほうが経費の範囲は広いが、一時所得は特別控除などがある
- 節税には経費の形状が必要不可欠
- 経費を増やせば節税になるが、どこまで経費に含まれるのかの判断は簡単ではない
- 住民税は自分で納付すれば原則会社にバレない
- わからないことがある場合は税務署や税理士に相談する
ブックメーカーで多くの所得を得た場合、確定申告は必要不可欠な作業です。後回しにするとどんどん面倒になっていきますので、早めに収入や経費を計算し、場合によっては税務署や税理士も活用して手続きを済ませましょう。