個人間トラブルを防ぐ借金の契約書(借用書)の書き方を徹底解説!

個人間でお金を貸し借りするにあたっては、適切な契約書(借用書)の作成が必要不可欠です。信頼できる相手に貸すのだからそんなものはいらない、と思われるかもしれませんが、貸す相手に関係なく、お金の貸し借りの際に借用書を作らないのは大変危険です。

普段は信頼できるように見えても、お金がかかっていればあっさり嘘をつく人間は少なくありませんし、また記憶違いからトラブルに発展する可能性も否定できません。

相手があなたのことを尊重してくれる存在ならば、契約書の作成に合意してくれるはずです。もし「お金を貸して欲しい、でも借用書は作りたくない」などと相手が言ってきたとしたら、あなたにとって相手はその程度の存在だったということです。相手が誰であろうと、必ず契約書を作成しましょう。

「諾成契約」と「要物契約」の違い


契約というの基本的には口約束だけでも成り立つという話を聞いたことがある方は少なくないかと思います。確かにその通りなのですが、一部それに該当しないタイプの契約もあります。

口約束だけで成立する契約を「諾成契約」と言います。もう少し細かく介設すると、当事者が合意するだけで、目的物の引き渡しなどがなくても成立する契約を諾成契約と言います。近代法では諾成契約が基本であり、多くの契約は口約束だけでも成立します。

例えば売買は典型的な諾成契約ですので、「これください」「はい」という会話だけでも契約は成立します。

一方、口約束だけでは成り立たず、目的物の引き渡しがあって初めて成立する契約を「要物契約」と言います。お金の貸し借りは要物契約に含まれるため、口約束だけでは成立せず、実際にお金の貸し借りをして初めて契約が成り立ちます。

「契約が成立すること」と「契約が成立したと証明すること」は全く別の話

お金の貸し借りの契約自体は、実際にお金を貸し借りした時点で成立します。しかし、書面を残さないと、「契約が成立したと証明すること」は極めて難しくなります。

万が一トラブルに発展して裁判で闘うことになった場合、契約の成立を主張したい人、つまり貸主がそれを立証する義務を負います。

法律上は契約が成立していても、実際にそれを証明することが出来なければ、貸主にとって不利な判決が出ることは免れません。そのような自体を防ぐためにも、契約書の作成は必要不可欠なのです。

「借用書」と「金銭消費貸借契約書」の違い


お金の貸し借りを行ったことを証明する契約書は、大きく「借用書」と「金銭消費賃借契約書」に分けられます。どちらも貸し借りがあったことを証明するもので、当事者の住所や名前、借りた金額、返済が滞った場合の対処法などを記載するものであるという点では一致していますが、署名する者と保管する人に違いがあります。

「借用書」は、借主(債務者)が署名し、貸主(債権者)が保管します。連帯保証人が存在する場合は、連帯保証人も署名します。

一方、金銭消費貸借契約書は、借主と貸主の双方が署名し、双方が1部ずつを保管します。連帯保証人がいる場合は、その人も1部を保管します。つまり、借用書は1枚しか存在しませんが、金銭消費貸借契約書は2枚以上存在することになります。

借用書と金銭消費貸借契約書の効果は全く同じですが、できる限り金銭消費貸借契約書を作成すべきです。借用書は借主が作成するものですので貸主に不利になる恐れがありますし、1部しかないので紛失したときに困ります。金銭消費貸借契約書は2部以上作成されるのでより安全ですし、双方が納得した上での作成が可能になります。

金銭消費賃借契約書に掲載すべき「11の項目」

金銭消費賃借契約書には決まったフォーマットがありません。自分たちの事情に合わせて、内容を拡張できます。

ただし、金銭消費貸借契約書の体をなしていない(借主や貸主の名前が入っていない、貸した金額が入っていないなど)と何の効力もなくなります。時間を掛けて無効な金銭消費貸借契約書を作成しないためにも、以下の項目は必ず挿入します。

書面の題名

書面の題名とは、書面の一番上に来るタイトルのことです。「金銭消費賃借契約書」としておけば問題ありません。

貸主と借主の名前・住所・押印

誰が借りて、誰が貸したのかがわからなければそれは借用書とはいえません。書面の題名のすぐ下に、借主と貸主の名前を記載しましょう。具体的には、以下のような形で記入するといいでしょう。

貸主(甲):氏名 鈴木太郎
      住所 東京都●●区●●●5丁目12番5号 (押印)

借主(乙):氏名 田中一郎
      住所 神奈川県横浜市××区6丁目1番 ××レジデンス609号室 (押印)

住所は「5-12-5」ではなく、きちんと「5丁目12番5号」のように記入します。マンションやアパートなどの集合住宅に住んでいる場合は、その集合住宅の正式名称と、部屋番号まで記入します。

貸し借りした金額と、貸し借りを行った日付

お金を貸し借りした金額と、貸し借りを行った日付をそのまま記載します。具体的には、以下のように記載します。

甲は乙に対して、2018年1月1日、金壱百万円を貸し渡し、乙はこれを受領した。

ここでのポイントは金額の書き方です。すでにご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、契約書で金額を記載する時は、原則としてアラビア数字(1,2,3……)ではなく漢数字を使います。

アラビア数字だと、線を書き足して金額を変えることが可能だからです。ワープロで印刷した数字を後から手書きで無理やり変えればどう考えたってバレバレですし、実際にそんなことをする人はいないと思いますが、念のためです。

また、画数の少ない漢数字は、画数が多い漢数字に置き換えたほうがより安全です。具体的には、以下のように置き換えます。

  • 一→壱
  • ニ→弐
  • 三→参
  • 五→伍
  • 十→拾
  • 百→陌、佰
  • 千→阡、仟
  • 万→萬

返済方法

返済する日付と、返済の手段を記載します。具体的には、以下のように書きます。

乙は、甲に対して、借入金壱百万円を、2018年1月から●●年××月まで毎月○○日限り金○○万円宛分割して、甲方に持参して支払う。返済にかかる交通費、手数料などは乙が負担する。

ここでのポイントは、返済する日付と返済の手段です。返済は分割払いが一般的ですが、双方の合意があれば一括返済にすることも可能です。支払い方法は持参、もしくは口座への振込が一般的です。

返した返していないでも揉めるのも面倒ですし、証拠が残る銀行振込をおすすめします。手数料がかかる場合は、借主が負担するのが一般的です。

利息

個人間のお金の貸し借りであっても、双方の合意があれば利息を設定することが可能です。具体的には、以下のような方法で記載します。

利息の金利は元金に対して5%とし、元金と同時に返済する。

個人間のお金の貸し借りの場合、設定できる金利の上限は109.5%です。ただし、利息制限法を超える金利は、設定することは可能であっても実際には無効になります。

なんだかややこしい話ですが、利息制限法を超える金利を付けても全く意味が無いということだけ覚えておけばOKです。利息制限法の金利は以下のようになっていますので、金利を決める際の参考にしてください。

  • 元金10万円未満:20%
  • 元金10万円以上、100万円未満:18万%
  • 元金100万円以上:15%

遅延損害金

遅延損害金とは、返済遅れが発生した場合に追加で支払う損害金のことです。利息は記載がない限り取れませんが、遅延損害金は記載がなくても取れるというルールがあります。しかし、後から遅延損害金について切り出すとトラブルにつながりかねませんし、やはり先に決めておいたほうがいいでしょう。具体的には、以下のように書きます。

期限後または期限の利益を失った時は、以後完済に至るまで、乙は甲に対して遅延損害金を10%の割合で支払う。

ここで言う期限の利益とは、返済期限が定められていることによって借主が受ける利益のことです。返済期限が定められているということは、言い換えればそれよりも前に返済をしなくてもいいし、返済を求められることもないということです。これが期限の利益です。期限の利益を失うとは、要するに返済が遅れることです。

なお、遅延損害金は、通常の金利の1.46倍まで設定可能です。例えば通常の金利が20%まで設定できる金額の貸し借りの場合、遅延損害金は20%×1.46=29.2%まで設定できます。

もちろん、これより低くなる分には全く構いません。通常の金利と遅延損害金を全く同じに設定するのも自由です。

即完済を求める条件

期限の利益を喪失した場合、つまり返済が遅れた場合、貸主は仮主に対して即返済を求めることができます。しかし、実際に1回返済が遅れただけで即完済を求めるというのは、実際には現実的な取り決めとはいえません。

仕事としてお金を貸している銀行や消費者金融も、返済が遅れたらまずは電話や書面で当月分の支払いを促し、それでも応じないという場合に即完済を求めるという流れを踏むのが一般的です。

借主がどのようなことをしたら、即完済を求めるのかを、事前に決めておくといいでしょう。具体的には、以下のように記載します。

乙について、次の事由の一つでも生じた場合には、甲からの通知催告がなくても乙は当然に期限の利益を失い、直ちに元利金を支払う。

  • 乙が元金もしくは利息を2回以上期限に支払わなかった時
  • 乙が甲に通知なくして住所を変更した時

どのような条件を作るかは、貸主と借主が話し合って決めます。上記は一例であり、状況によっては

  • 借主が貸主に通知することなく新たに借金をした
  • 借主が税金を滞納した

などの条件を追加してもいいでしょう。

トラブルが発生した場合の解決方法

これだけ詳細に項目を設定しておけば、トラブルに発展する可能性はかなり低くなりますが、それでも0ではありません。万が一揉めた際に備えて、その解決方法も記載しておくことをおすすめします。具体的には、以下のように記載します。

  • 本契約に定めのない事項又は本契約について疑義を生じた事項については、甲及び乙は、誠意をもって協議するものとする。
  • 本契約に起因する紛争に関し、訴訟を提起する必要が生じたときは、○○地方裁判
    所を第一審管轄裁判所とするものとする。

契約に取り決めがない事項については、基本的には両者が協議して解決しますが、解決しない場合は裁判所を通じて決着を着けることになる可能性があります。裁判所は必ずしも事前に定める必要はありませんが、第一審管轄裁判所だけは両者の合意があれば定められます。

金銭消費貸借契約書の作成枚数と保管人

その契約書を何通作成し、誰が保管するかを記載します。具体的には、以下のように記載します。

以上、本契約成立の証として、本書を2通作成し、甲乙は署名押印のうえ、それぞれ1通を保管する。

連帯保証人が存在しない場合は、上記の通り、貸主と借主がそれぞれ1通ずつを保管します。

以上、本契約成立の証として、本書を3通作成し、各当事者は署名押印のうえ、それぞれ1通を保管する。

連帯保証人が1人いる場合は、上記の通り、各当事者(貸主、借主、連帯保証人)がそれぞれ1通ずつを保管します。

契約書の作成日付

契約書の作成日付を記載します。具体的には、以下のように記載します。

2017年12月1日

日付は西暦でも和暦でも構いませんが、契約書内では表記を統一させてください。

お金を貸した後に契約書を作ることは可能?


すでにお金を貸してしまったものの、借用書や金銭消費賃借契約書を作っていなかったという場合でも、契約書を作成することは可能です。ただし、この場合作成する書類の名前は「債務承認弁済契約書」になります。

返済方法や利息、遅延損害金、契約書作成日など、基本的な項目は金銭消費貸借契約書のそれと代わりありませんが、一部債務承認弁済契約書独特の項目も存在します。

借主が債務の存在を認めた文言

債務承認弁済契約書を作成する場合は、必ず借主が債務の存在を認めた文言を記載しなければなりません。具体的には、以下のように記載します。

乙は、甲に対し、2015年1月1日付金銭消費貸借契約に基づく借受金債務として、2018年1月1日現在、金壱百万円の債務を負っていることを確認する。

お金を貸した日がわからない場合は?

上記の例では、2015年1月1日にお金を貸したことがわかっていますが、契約したのがかなり昔の場合、お金を貸した正確な日付までは覚えていない可能性があります。

口座振込で返済していた場合は、その記録から大まかな貸付日を割り出せるので、その旨を記載します。大まかな貸付日すらわからない場合は、契約書を作成した時点でいくら借金があるかだけを記載してもOKです。

踏み倒されそうな場合は「公正証書」を作成する

借用書や金銭消費貸借契約書、債務承認弁済契約書は、借金をしたという事実を証明する私文書であり、それ自体には借金を強制的に回収できる法的拘束力はありません。

相手の支払いが滞った場合は、これらの書類を基に裁判を起こし、判決を確定させ、相手の財産を差し押さえる必要があります。この手続には多大な労力がかかるため、できれば避けたいものです。

そこで活用したいのが公正証書です。公正証書とは、公証役場という特別な役場(市区町村役場とは別の場所にあるのが一般的です)で、公証人という専門家(準公務員)が作成する公文書です。

公正証書には強制力があり、返済が滞った場合には裁判を経ることなく強制執行、つまり財産の差し押さえができます。

公正証書は1部作成のうえ、公証役場で保管します。そのためどちらか一方に改ざんされることもありませんし、災害などで失われてしまうリスクも少ないです。公正証書の内容が裁判で否認されたり、無効とされる可能性はほとんどなく、双方がより安心して契約を結ぶことが出来ます。

公正証書の作り方

公正証書は原則として公証役場で作成します。公証役場はどこを選んでも構いませんので、当事者にとって都合がいいところを選んでください(参考:公証役場一覧)。

当日対応してくれる公証役場もありますが、そうでない役場もありますので、電話で予約をしたほうが安心です。また、債権者と債務者が事前に公正証書の内容を大まかに決めておく必要があります。

特に大切なのが、強制執行認諾文言の内容です。強制執行認諾文言とは、「債務者が契約違反を犯した場合≒滞納した場合には、直ちに強制執行することを認める」という内容の文言です。

この文言を入れることが公正証書を作る意味のすべてと言っても過言ではないほど重要な一文なので、必ず入れるようにしましょう。

公正証書を作成するためには債権者と債務者、連帯保証人がいる場合はその人も公証役場に向かう必要がありますが、債権者と債務者は弁護士などの代理人を立てられます。代理人と本人が同時に行っても構いません。

持ち物と費用

必要な持ち物は公証役場によって多少異なるケースがありますが、一般的には以下の様なものを持参します。

  • 本人が来る場合:身分証明書と認印もしくは印鑑登録証明書と実印
  • 代理人が来る場合:本人が書いた委任状、本人の印鑑登録証明書、代理人の身分証明書と認印もしくは印鑑登録証明書と実印

細かいルールは公証役場によって違う可能性があるので、必ず事前に確認してください。

費用(手数料)は貸付額によって異なります。どこの公証役場で作成しても金額は変わりませんが、誰が負担するのかは事前に話し合っておきましょう。

貸付額 手数料
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 11,000円
1,000万円まで 17,000円
3,000万円まで 23,000円
5,000万円まで 29,000円
1億円まで 43,000円

強制執行の方法

あまり考えたくはないことですが、万が一支払いが届こってしまった場合には、裁判所に対して強制執行を申し立てます。まず、公正役場から公正証書を債務者と連帯保証人に送ってもらいます。

次に、公正証書を作成した保証人から、強制執行を認める旨を認めてもらいます。これを終えると、裁判所に対して強制執行を求められます。

まとめ

  • 個人間でお金の貸し借りをするにあたっては、契約書の作成が必要不可欠
  • お金を渡した時点で契約は成立するが、書類がないとそのことを証明できない可能性が高くなる
  • お金の貸し借りを証明する書類には「借用書」と「金銭消費貸借契約書」があるが、後者のほうが信頼性が高い
  • 個人間のお金の貸し借りでも利息や遅延損害金を設定できる
  • 支払いが不安な場合は公正証書を作成する

個人間のお金の貸し借りであっても、トラブル防止のために、必ず契約書を作成しましょう。