カードローンとクレジットカードは、どちらもカードを用いてお金を借りるという点では同じです。しかし、両者の仕組みや機能は根本的に異なります。今回の記事ではカードローンとクレジットカード、それぞれの仕組みと違いについて解説いたします。
カードローンは「銀行や消費者金融の提供するローン」
カードローンとは簡単に言えば、銀行や消費者金融などの金融機関が提供するローンです。利用者側から見た場合は「お金を借りる手段」の1つです。
カードローンを利用したい場合は、まずは金融機関にカードローンの申し込みを行います。金融機関は申し込みを受けて審査を行い、融資の可否を決定します。審査に合格した場合、申込者のもとにカードが送られます。このカードをATMに挿入してお金を借りたり、返したりします。それが面倒だという場合は、銀行口座に振り込んでもらったり、銀行口座から毎月自動で引き落としてもらったりすることも可能です。
調査によれば、カードローンの利用経験率は47.7%で、概ね2人に1人が生涯で少なくとも1回はカードローンを利用していることがわかります。カードローンが一般消費者にとって思った以上に身近な存在であることがわかります。
カードローンと目的別ローンの違い
金融機関はカードローン以外にも住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなどを提供しています。住宅ローンなどの借りたお金の使い道が指定されているローンを「目的別ローン」と言います。一方、カードローンの大半はお金の使い道が指定されていない、利用者の判断で自由に決められます。
カードローンは使い道を自由に決められる代わりに、金利は高めに設定されています。目的別ローンはその逆で、使いみちに大きな制限がかかる割に、金利は低めに設定されています。使いみちが決まっている場合は目的別ローンを利用し、生活費の足しがほしい時はカードローンを利用する、というのが一般的です。
クレジットカードは「商品の購入時に代金を一時的に立て替えるカード」
一方、クレジットカードとは、クレジットカード会社が提供する、商品購入の代金を一時的に立て替えられるカードです。支払い方法には一括と分割があります。
クレジットカードを利用したい場合は、まずはクレジットカード会社にクレジットカードの申し込みを行います。金融機関は申し込みを受けて審査を行い、融資の可否を決定します。審査に合格した場合、申込者のもとにはカードが送られます。これを買い物のときに提示すると、商品の支払いを一時的に立て替えられます。
あらかじめクレジットカード会社が決定した締め日になると請求金額が確定し、支払日になるとその金額があらかじめ指定した口座から引き落とされます。
クレジットカードのキャッシング枠とは
多くのクレジットカードにはキャッシング枠というものが定められています。キャッシングとは、クレジットカードを使ってお金を借りる仕組みです。クレジットカードのメイン機能は購入代金の建て替えですが、キャッシング枠を利用すればお金も借りられます。審査はカード作成時に行われます。
キャッシング枠の上限額は50万円程度になっていることが多く、カードローンと比べると少額の借入がメインとなります。キャッシング枠がいらない場合は、申込時にその旨を伝えればOKです。
カードローンとクレジットカードの5つの違い
カードローンとクレジットカードの主な違いは以下の5点です。
- 現金を用意できるか否か
- 担保の有無
- 審査の難易度
- 金利(手数料)
- 上限金額
- 仕組み
現金を用意できるか否か
カードローンとクレジットカードの最大の違いは、現金を用意できるか否か、という点です。カードローンはお金自体を借りるサービスであるため、現金を用意できます。借入額が大きい場合は口座にお金が振り込まれますが、それを下ろせばやはり現金が手に入ります。
一方、クレジットカードは買い物代金の建て替えが主な機能であり、現金を用意することはできません。買ったものを現金化する、というやり方もなくはないのですが、それはクレジットカード現金化と呼ばれる非常に危険な行為です。
クレジットカード会社はクレジットカード現金化を規約で禁じています。もしこれを行ったことが発覚した場合には、クレジットカードは利用停止となり、一括返済を求められます。
クレジットカード現金化を行う業者の中には、極めて悪質な(商品を買うだけ買わせてその買い取りを行わない、得た情報を闇金に流すなどする)業者も存在するため、絶対に関わってはいけません。
どうしてもクレジットカードで現金を用意したい場合はキャッシング枠を利用するのが良いでしょう。ただし、キャッシング枠は前述の通り上限額が低い上、金利もカードローンより高いので、頻繁に使うのはおすすめできません。あくまでも一時的に現金が枯渇したときの最終手段として考えておくのがいいでしょう。
担保の有無
担保とは、借入時に債務者が差し出す様々な物品のことです。万が一返済ができなくなった場合は、債権者は担保を没収し、現金化することによって債権を回収します。担保には万が一の際に債権者が現金化できるものが好まれます。日本では不動産、すなわち土地と建物が担保にされることが多いです。
カードローンには無担保のものと有担保のものがありますが、無担保のもののほうが種類が多いです。無担保カードローンは担保がなくても借りられる反面、債権者にとってはリスクの高いものであるため、金利は高めに設定されていることが多いです。有担保ローンはその逆で、金利は低めに設定されていることが多いです。
一方、クレジットカードは一見無担保に見えますが、実際は一部有担保です。担保はクレジットカードで購入した商品です。例えばクレジットカードでゲーム機を買い、その代金が払えなかった場合は、ゲーム機は担保として債権者であるクレジットカード会社に没収されてしまいます。
もちろん、クレジットカードで買ったものが消費される性質のもの(飲食物、ティッシュや紙コップなどの生活用品)、もしくはサービス(散髪代、医療費、エステ代など)だった場合は別ですが、一部が担保にできると言うだけでもクレジットカード会社は儲けものです。
審査の難易度
カードローンとクレジットカードの審査内容はほぼ同じですが、審査の難易度はどちらかと言えばカードローンのほうが高いです。
カードローンは前述の通り無担保ローンのものがほとんどであり、無担保である以上は審査を厳しくしてそもそも貸し倒れが発生しないようにする必要があるからです。それに対してクレジットカードは一部が有担保なので、審査は若干ですが緩めです。
ただし、これはあくまで平均的なカードローンと平均的なクレジットカードを比べた場合の話です。クレジットカードの中には、審査が尋常じゃなく厳しいものもあります。
例えばダイナーズクラブの「ダイナースクラブ プレミアムカード」は、原則として招待制であり、こちらからはそもそも申し込めません。招待されるためには数千万円クラスの年収、それにふさわしい社会的地位などが必須とされています。今の日本でこのカードを持てるのは全体の0.1%もいないでしょう。
一方、楽天カードやACマスターカードのように、ネット上で「誰でも通る」と言われるほど審査が易しい物もあります。実際には一応条件があるのですが、会社員なら零細企業勤務でも間違いなく通るレベルであることは確かです。
同じ楽天のカードであっても「楽天プレミアムカード」は審査がそれなりに厳しかったりと、クレジットカードの世界はなかなかに複雑です。
個々のクレジットカードの審査難易度は、年会費を見れば大体わかります。年会費が高いほど審査難易度も高いです。年会費が無料のクレジットカードは審査難易度が低いので、クレジットカード初心者にはおすすめです。
なお、ほぼすべてのカードローン、及び過半数のクレジットカードには「在籍確認」という手続きがあります。在籍確認とは、申し込みをした人が勤務先を偽っていないことを確認するために、職場に電話をかけて確認する手続きのことです。クレジットカードの場合は在籍確認がないことも少なくないのですが、カードローンの場合はほぼ確実にあります。
金利(手数料)
カードローンには金利、クレジットカードには手数料がかかります。金利と手数料は呼び名が違うだけで、実質的には同じものであると考えていただいて問題ありません。通常はカードローンのほうが高金利です。
カードローンの金利は金融機関の種類にも左右されます。銀行のカードローンは、消費者金融のカードローンと比べて金利が高めに設定されています。一例として、イオン銀行の金利一覧表を貼っておきます。
イオン銀行カードローン![]() |
お借入限度額 | 10万円〜90万円 | 11.80%〜13.80% |
---|---|---|---|
100万円〜190万円 | 8.80%〜13.80% | ||
200万円〜290万円 | 5.80%〜11.80% | ||
300万円〜390万円 | 4.80%〜8.80% | ||
400万円〜490万円 | 3.80%〜8.80% | ||
500万円〜590万円 | 3.80%〜7.80% | ||
600万円〜790万円 | 3.80%〜5.80% | ||
800万円 | 3.80% |
引用:イオン銀行
同じ金融機関であっても、借入金額や顧客の属性によって金利は変わります。借入金額が大きく、属性が良いと金利は安くなります。
一方、クレジットカードの手数料は支払い回数によって決まります。クレジットカードの支払い回数は一括(1回)と分割があり、分割には2回、3回、6回、10回などがあります。
大抵のクレジットカード会社は、一括もしくは2回払の場合は手数料無料としています。一例として、オリコカードの手数料表を貼っておきます。
支払回数(回)・ 支払期間(カ月) |
手数料率(%) 実質年率 |
現金価格100円 あたりの 手数料額(円) |
---|---|---|
1 | 0.0 | 0.0 |
2 | 0.0 | 0.0 |
3 | 12.2 | 2.04 |
6 | 13.9 | 4.08 |
10 | 14.6 | 6.80 |
12 | 14.8 | 8.16 |
15 | 14.9 | 10.20 |
18 | 15.0 | 12.24 |
20 | 15.0 | 13.60 |
24 | 15.0 | 16.32 |
ボーナス 一括・二括 |
0.0 | 0.0 |
引用:オリコ
上限金額
カードローンとクレジットカードでは、カードローンのほうが上限額は高く設定されています。例えば先程例に出したイオン銀行の場合、上限金額は800万円です。一方、オリコカード・ザ・ポイントの上限金額は300万円です。300万円はクレジットカードの上限金額としてはまずまず高い方ですが、それでもカードローンには大きく届いていません。
仕組み
利用者にはあまり関係ないことですが、最後に両者の仕組みを解説します。
カードローンは債務者(利用者)と債権者(金融機関)の2者から成り立つ非常にシンプルな仕組みであるのに対して、クレジットカードには債務者(クレジットカード会員)と債権者(クレジットカード会社)加えて加盟店も関わってきます。加盟店とは、簡単に言えばクレジットカードが使えるお店のことです。加盟店はクレジットカード会社と契約している会社です。
まず、クレジットカード会員は加盟店でクレジットカードを使います。加盟店はクレジットカード会員に対して商品やサービスを提供します。
加盟店はクレジットカード会員の支払金額を合計して、クレジットカード会社に連絡します。クレジットカード会社はその金額から手数料を差し引いた分を、加盟店に対して支払います。
クレジットカード会社はクレジットカード会員に対して支払い請求を行い、会員はクレジットカード会社に対して支払いを行います。
これを見ても分かる通り、クレジットカード会社の収入源は加盟店が支払う手数料です。手数料はお店の種類や国際ブランドにも左右されますが、概ね3~7%程度です。加盟店は手数料を支払うことになりますが、その手数料よりも販売機会の拡大やレジ前混雑の緩和、管理費の削減効果(現金支払いのみにするとその管理が大変になります)のほうが大きくなることも多いです。
また、クレジットカード会社は貸し倒れのリスクを負っています。加盟店はクレジットカード会社が支払ってくれるので、貸し倒れのリスクは(ほぼ)ありません。
まとめ
- カードローンは金融機関でお金を借りるためのローン
- クレジットカードは代金立替機能がメインのカード
- クレジットカードにはキャッシング機能がついてくることがある
- クレジットカードの現金化はしてはいけない
- カードローンのほうが審査が厳しい。理由は基本的に無担保であるため
- クレジットカードの金利は2回払までならばかからないことが多い
カードローンもクレジットカードも、上手に使えば非常に便利なものです。両者をうまく使い分けていきましょう。